監視されるの嫌です。 いろんな生き方あっていいんです。 〜住民基本台帳法の改悪に反対します〜
「いろんな生き方」を制限する?! これまで、別姓を考える会で取り組む法律関係のことと言えば、言うまでもな いことですが、民法の改正でした。そして、それは依然大きな目標です。 しかしながら、「いろんな生き方あっていい」を合い言葉とする私たちに、も う一つの課題が生じてしまっています。住民基本台帳法の改悪です。今もくろま れている改悪は、「いろんな生き方」を大幅に制限し、管理・抑圧するもので す。私は、無関心ではいられません。 問題は、私たちの暮らしを、国が監視・管理していくことです 新聞などでは、この法案の問題点を、プライバシーの漏洩として報じていま す。確かにそういう問題点はあります。けれども、より大きい問題は、個人情報 を国が独占し、管理し、私たちの暮らしを監視していくというところです。 私は商品ではない:コードなんかいりません この法案は、私たちにコード(10桁の番号)を振ろうとしています。氏名、性 別、生年月日、住所はもとより、技能・体力・財産などの個人情報が集積される ことが、もくろまれています。(なぜ、そのような情報まで? そのねらい は?) この法案は、コードの入ったカードを一人一人に所持させることも予定してい ます(当初は希望者のみとのこと)。もしこの法案が成立すれば、カードを所持 していないと、身元確認ができないことにもなりかねません。レンタルビデオ や、スーパーの買い物然りです。そして、そのカードを利用するたびに、私たち のプライバシーが氾濫し、日常の活動が番号を通して記録され、また行動が監視 されてしまうことになるのです。プライバシーが危ぶまれるというより、むしろ プライバシーが消滅してしまうと言っていいかもしれません。 現時点でも、既に監視のシステムは出来ています。スーバーなどのレシートを 細かく見てみてください。いつ、どんなものを、買ったか、その値段だけではな く、名前も記録されていたりします。「会員」などになった場合に限るかもしれ ません。けれども、記録されているのは、レシートという紙にだけではないので す。私たちが直接見たり利用することのない、その企業のコンピュータにも、イ ンプットされていること。それを、忘れるわけにはいきません。コンビニのレジ では、年齢なども入力することなどは、よく知られていますが、同時にカメラで 私たちは記録されています。既に「監視社会」になっている現代を、より一層強 固にしていくこの法案に、私は強い危惧を抱きます。 通称を使用する権利を奪われてしまう...それだけじゃないんです! 別姓を考える会としての、具体的な危惧を整理しましょう。 @ 通称を使用する権利を奪われる 現在も、自分の本名を「戸籍に記されている氏名でない」と、軽んじられ、傷 つけられている人がたくさんいます。コードが作られることによって、コードは 利用されていきます。そして日常の中で頻繁にコードを照会することが、本人か ら自分の本名を奪うことになってしまいます。自らの本名を使用することに対 し、罰則をもって警察が現れ、コード上の氏名と合致した名前を強要する、住民 基本台帳法改悪案は、そんな法案なのです。 A 出生地を秘匿する権利を奪われる 戸籍によって、出生や出生地、続柄などの差別が作り出されています。婚外子 差別・被差別部落差別・民族外国人差別・長男次男養子などへの差別・・・。そ れらを、日常的なものにしていく法案です。レンタルビデオ屋さんで、スーパー で、様々な施設を利用するたびに、なぜ自分のプライバシーを曝されなくてはな らないのでしょうか。プライバシーを垂れ流し、それを日常化させていく、住民 基本台帳法改悪案は、そんな法案なのです。 B 居住の自由を奪われる 住所とは何でしょう。戸籍の本籍が、住所でしょうか。住民票に記載されてい る場所が、住所でしょうか。たまたま転がりこんだ友達の部屋は、どうでしょ う。旅に出て、あちらこちらを歩く人もいるでしょう。居着くことも、あるでし ょう。私たちには、住民票以外の住所で暮らす権利があるのです。それが、侵害 されます。住民票に記載されていない場所で暮らしているとき、罰則をもって警 察が現れ、コード上の住所と合致していないところにいたことを追求していく、 住民基本台帳法改悪案は、そんな法律なのです。いつ、どこにいるか、そんな人 間の自由が、奪われ、挙動を一つ一つ管理されるなんて、ごめんです! ねらいは、何なんでしょう...おおげさって思うかもしれませんが 戸籍によって私たちを管理していて、一人一人にコードをつけてコンピュータ 入力していく。しかも、地方自治体の管轄であった住民登録を、国が奪って、一 本化してしまう(地方自治体は、自治を奪われることになります)・・・。国 は、何をねらっているのでしょう。 同一人性の確認? もう戸籍があるじゅゃないですか。 コードによったほうが便利? リスクのほうが巨大です。 じゃあ、一体、巨大な予算(初年度600億・次年度400億)を費やして、何をや ろうというのでしょう。 おおげさに思われるかもしれませんが、戦争(侵略)の準備。私は、ここのと ころ冷静にそう感じています。 私は、監視され、管理され... 私が、いつ、どこに行ったか。何を買ったか。一緒にいたのは誰か。台帳上で は、どこで夜を明かすことになっているか。台帳法によって、私は、監視されま す。 私が、いつ、誰と、どんな話をしているか。盗聴法によって、私は、監視され ます。 万が一、私が、国にとって都合の悪い話をしたり、国にとっておもしろくない 挙動をしていたら、きっと検挙されます。根拠は国の管理する枠を逸したという だけで十分です。 ガイドライン法で、港・空港だけでなく、学校も役場も公民館も、公園も広場 も道路も、T有事Uという日常に使われるでしょう。「平和」の名の下に(アメ リカ合州国のように)、「正義」の旗の下に、私も、動員されるでしょう。コー ドに付記される一人一人の年齢・技能・体力などが、きっとこの動員に生かされ ていくのでしょう。そう、動員とは徴兵のこと。「赤紙」が届けられたとき、そ こにその人が居住していなければならないように、台帳法は見張るのでしょう。 「赤紙」が、FAXで来たら・・・、E-メールの着信を開いて「赤紙」があった ら・・・。冗談であってほしいと思っています。 刃向かうことなく、「平和」のため「正義」のため、そして「オクニ」のため に、自らを捧げることができるように、一つの旗や歌を強制して、「国家のため に個人を捧げる」という意識を強めるトレーニングをするのでしょう。また、国 にとって都合の悪い者を、法の名の下に、検挙・排除していくのでしょう。 戦争は、戦闘とイコールではありません 戦争は、戦闘とイコールではありません。戦闘が起きたときは、もうおしまい です。言い換えれば、戦闘の前から戦争は始まっています。個人の権利を、権力 が奪い、権力のために個人の自由を生命を消費していく・・・。もうそれは、戦 争です。戦争のはじまりではなく、戦争そのものです。 「二度と戦争を〜」とか「戦争につながる〜に反対」なんて、私にとって子ど もの頃からよく聞いてきた台詞です。そして私自身、そう言ってきました。それ でいて私は、どこかで枕詞的に聞き流していたように思います。いつも通りとい うことで、唱えていただけじゃなかったかと振り返ります。「そんなこといった って、そうそう戦争だなんて」そう思っていたのです。でも、正直言って、この 頃、不安です。ひょっとして、何十年後かの歴史の教科書に「1999年〜戦前」な んて載っていないとは、言い切れません。 まだ間に合うと信じます さあ、今こそ「いろんな生き方」を闊歩していきましょう。まだ間に合いま す。諦めたら、おしまいです。これからの時代、思春期を迎え、恋をしたり、冒 険をしたり、自分の成長に感動したりする少年少女のためにも、そして何より、 もっともっといろんなことをやりたい自分と、自分につながるたくさんのともだ ちのために、諦めてまぁいいやと、伏し目がちになるのは、よそうと思います。 個人の、一人一人の暮らしを、謳歌していく空気を、風を、起こしていきまし ょうね。「いろんな生き方あっていい」ここから、始めましょう。 ※住民基本台帳法改悪並びに盗聴法等に関わる 詳しくそして新しい情報を得る ため、 佐藤文明さんのHP http://www2s.biglobe.ne.jp/~bumsat/ に是非アクセスしてみてください。 (土屋聡)