参議院選挙候補予定者(宮城県選挙区)への
選択的夫婦別姓の法制化に関わる公開質問状(98年6月)



参議院選挙候補予定者(宮城県選挙区)への
選択的夫婦別姓の法制化に関わる公開質問状
 恒例になりつつある国政選挙候補者(予定者)への、選択的夫婦別姓の法制化
に関わる公開質問状です。投票の際の参考に、また実際になった後の法制化実現
のための一助となればと考えます。

参議院選挙候補予定者
         様

選択的夫婦別姓の法制化に関わる公開質問状

私たちは、別姓を考える会です。
 私たちは「いろんな生き方、あっていい」を合い言葉に、1991年から、選択的夫婦
別姓の法制化を実現される運動を進めてきました。東北(宮城県)を中心に活動してきま
したが、現在では北海道から沖縄県まで全国におよそ130名の会員がいます。
 これまで、選択的夫婦別姓法制化のための国会請願を多くの議員の方々にお願いし、そ
して快諾していただきました。ありがとうございました。しかし、96年、97年の通常
国会では、選択的夫婦別姓の法改正は実現されませんでした。私たちは残念に思っており
ます。また、私たちは宮城県議会に「選択的夫婦別姓等の民法改正を求める請願書」を昨
年2月に提出しており、継続審議となっております。選択的夫婦別姓とは「別姓でも同姓
でもどちらでもいい。本人たちの選択の幅を広げよう」という柔軟なそして許容量のある
ものです。
 さて、今回の選挙でもさまざまな争点があるようですが、別姓を考える会では「一人一
人が自分の個性を大切にしながら、互いの個性を認めつつ、互いの権利を尊重し合いなが
ら暮らせる社会を実現させたい」と考え、最も信頼のおける候補者に一票を投じようと考
えております。選択的夫婦別姓の法制化だけではなく、性別による差別(女性差別)や戸
籍による差別(婚外子差別・部落差別・外国人差別・民俗差別など)も撤廃されなければ
ならない課題であると認識しております。今回の選挙の立候補予定にあたり、どのように
お考えになられているか、当会では注目しております。ぜひ以下の4点について、ご回答
いただきたくお願いいたします。
]
1.あなたは、選択的夫婦別姓の法制化には、賛成ですか。反対ですか。
  その理由は、どのようなものですか。
2.夫婦別姓とともに、民法改正要綱案には、民法900条の婚外子差別に関わる条項の
  改正が、提起されています。婚外子差別条項については、国連の人権規約委員会から
  の勧告がなされておりますが、あなたは、婚外子差別撤廃に、賛成ですか。反対です
  か。その理由はどのようなものですか。
3.民法改正要綱案で、別姓夫婦の子どもの姓について、法務省案では、別姓夫婦の子の
  姓は婚姻時に届け出をすることになっておりますが、98年通常国会(6月8日衆議
  院有志議員による)に議員立法で提出された案では、別姓夫婦の子の姓は出生時に届
  け出をすることになっております。この2つの案について、どちらがよいと思われま
  すか、その理由はどのようなものですか。
4.家族は大切なものであるということに、どなたも異論はないと思われます。しかし一
  言家族と言ってもその姿は様々です。今日においては人数・構成・それぞれの仕事戸
  籍国籍についても、非常に多様化が進んでいます。私たちは、一人一人のちがいを認
  め合うことが、家族を大切にすることと捉えております。互いのちがいを認め合うこ
  とが、豊かさなのではないかと考えております。選択的夫婦別姓の論議の中で「別姓
  は家族の崩壊をもたらす」という声がありましたが、家族とはどうあるべきとお考え
  ですか。あなたの意見をお聞かせください。なお国際家族年宣言には次のように書か
  れてあります。「国内、あるいは国によって《理想の家族像》も、大きく異なる。政
  府は、家族に関わる政策の遂行において、明示的であれ、非明示的であれ、唯一の理
  想的な家族像の追求を避けるべきである。」(1989.12.8.国連総会採択)

 以上4点について、ご回答をお待ち申し上げております。なお、会員に皆様のお考えを
伝えるため、少なくとも6月19日までにお返事をいただきたいと思います。また別姓を
考える会の機関紙並びに関連のホームーページにも回答を載せたいと思います。(以下の
別姓通信編集部・土屋までFAXまたはEメールで送信していただければ幸いです。)お
忙しいことと思いますが、よろしくお願いいたします。(※同封の回答用紙をご利用くだ
さい。) 
^1998年6月10日
                 別姓を考える会 (連絡先 樋口典子)
FAX送信先 0229-22-5713 (別姓通信編集部  土屋聡)  Eメールtutiya@fsinet.or.jp

選択的夫婦別姓の法制化に関わる公開質問状、回答  回答者
            (候補者と異なる場合はその方の氏名)
1.選択的夫婦別姓の法制化に賛成反対、その理由


2.婚外子差別撤廃に賛成反対、その理由


3.別姓夫婦の子の姓について、婚姻時に届け出か、出生時に届け出か、その理由


4.家族とは、どのようにあるべきか


5.メッセージなど


参議院議員候補者公開質問状回答
■選択的夫婦別姓の法制化に関わる公開質問状、回答  回答者
         (候補者と異なる場合はその方の氏名)
1.選択的夫婦別姓の法制化に賛成反対、その理由
2.婚外子差別撤廃に賛成反対、その理由
3.別姓夫婦の子の姓について、
  婚姻時に届け出か、出生時に届け出か、その理由
4.家族とは、どのようにあるべきか
5.メッセージなど

■ 佐藤よしひろ (社民党)   記入者   渡辺俊哉

1.選択的夫婦別姓の法制化に賛成反対、その理由
   賛成です。
 皆様方もご承知のことと思いますが、社民党は10年以上前から選択的夫婦別姓
制度の導入、相続に関する婚外子への差別撤廃などを軸とする民法改正を主張
し、党独自案も検討してきました。その理由は、姓の選択権は個人に属するもの
であり、法律によって強制するものではないこと、結婚により改姓する場合、手
続きがわずらわしい上に、知名度を一から作り上げなければならないなど、仕事
上、日常生活上の不便が多いことなどです。
    社民党は昨年の通常国会に、さきがけと共同提案で議員立法として選択的夫
婦別姓を含む民法改正案を国会に提出しましたが、自民党の反対で残念ながら廃
案になっています。
 さらに今年6月8日にも、社民党が主体となって、自民党・自由党を除く国会議
員有志で、国会に法案を提出しました。国会に法案を提出し、今度は何とか継続
審議に持ち込むことができました。社民党の比例区候補には長年民法改正に取り
組んできた福島瑞穂弁護士もおりますので、私の当選のあかつきには、福島さん
と一緒に改正案の成立に全力を上げる所存です。

2.婚外子差別撤廃に賛成反対、その理由
 賛成。婚外子の相続権が婚姻内子の2分の1しか認められていないと言う差別
は、法律上の形式行為に過ぎない婚姻制度によって、財産上著しく不利益を与え
るものであり、不当な差別と言わざるを得ません。また、子供に責任のないこと
で不利益を与えることにもなります。婚姻についての考えの変化も考慮し、差別
は撤廃すべきです。
  なお、法律案についての立場は1.で述べたとおりです。

3.別姓夫婦の子の姓について、婚姻時に届け出か、出生時に届け出か、その理
由
  出生時に届けることとすべきです。
  別姓の子の姓をどうするかは、夫婦間の十分な話し合いと合意よって決定され
るべき事です。その合意は、夫婦生活を続ける中で自然に作られてくるものでも
あります。したがって、子の姓の決定はなるべく遅いほうが望ましく、出生時に
届ければ良いと思います。
 なお、先に述べたとおり、社民党は議員立法案を提案している立場であり、出
生時に届けるという案は、党の見解でもあります。

4.家族とはどのようにあるべきか
 家族の核になる夫婦は生まれも育ちも考えも違う他人同士です。それぞれの考
えを尊重し合いながら、だんだんと夫婦間の共通の考えや家庭のルールも育って
いくものと考えます。子供についても一人の人格であり、その個性は尊重されな
ければならないと考えます。しかし、子供がしっかりとした価値判断力を身につ
けるためにも、その判断の根拠の一つ
として親の考えかた、親の価値観についてはしっかりと子に伝えるべきだと考え
ています。
 また、国連総会の採択はまったく同感であり、家庭に関する価値観、道徳観は
国家が介入すべき問題ではないと思います。

5.メッセージ
 以上述べましたように、社民党、佐藤よしひろは、民法改正を積極的に推進し
ております。古い考えにとらわれず、今日の多様な価値観を認め合うように、こ
れからも世論にアピールし、法改正をできるだけ早く実現できるように努力する
所存です。

■佐藤道子(共産党)
1.選択的夫婦別姓の法制化に賛成反対、その理由
 賛成です。女性の社会進出が進むなかで、結婚による改姓は積み重ねてきた社
会的信頼や研究の実績を途絶えさせてしまうなどの弊害が指摘されており、選択
的夫婦別姓は認められるべきと思います。去る6月8日、選択的夫婦別姓制度を
柱とする「民法の一部を改正する法律案」が、日本共産党など5会派の超党派で
衆議院に提出されましたが、法制審の答申をうけながら自民党の反対で内閣は法
案をださないなかで、国会における各党の合意の努力が実を結んだものと思いま
す。こうした民法改正の実現は、「個人の尊厳と両性の本質的平等」を保護した
憲法24条を真に実現させるものであり、民主主義の新たな前進の一歩となるこ
とを心から願っております。なお、日本共産党は、既に1987年から夫婦が互
いに希望すれば別姓を名乗ることができるように民法の改正を求めてきました
が、昨年の!0月末には「選択的夫婦別姓制度の導入など民法改正案大綱」を改
めて発表しました。今日、「今日別姓をのぞむ人に選択の自由を与えてもよい」
という、社会的な合意形成がすすんできていますが、その早期実現めざして、私
もがんばりたいと思います。

2.婚外子差別撤廃に賛成反対、その理由
 賛成です。子どもは、だれもが社会的にも経済的にも平等に扱われるべきで
す。日本共産党は「民法改正案大綱」でも、「非嫡出子の相続差別の廃止」を明
確にし、現行法では「嫡出でない子の相続分は、嫡出子の2分の1」となってい
るのを、「同等に改め」るように提案しています。

3.別姓夫婦の子の姓について、
  婚姻時に届け出か、出生時に届け出か、その理由
 別姓夫婦の子どもは、出生時に夫婦いずれかの姓を届けるようにすべきと考え
ます。そして、子どもが18歳になったときには、みずからの意思で改めて自分
の姓(夫婦のいずれか)を決めるようにできようにしておくことも必要です。結
婚が、「個人の尊厳と両性の本質的平等」のうえに成り立つものであることは当
然ですが、夫婦が別姓を名のる場合は、子ども自身の人権を尊重してすすめるこ
とが大切と考えます。

4.家族とは、どのようにあるべきか
 家族とは、人類の長期にわたる人間生活の営みが積み重ねられ、今日のよう
に、個人の尊厳と両性の平等が家族生活の原則となるような生活形態が確立され
てきたものと考えます。そのあり方は、夫婦や子ども、親など、その同居する構
成によって、さまざまであっていいと思います。したがって、ある家族像をモデ
ル化したりすべきではなく、国際家族宣言にあるように「唯一の理想的家族像の
追求を避けるべき」ではないでしょうか。また、家族と地域社会とのかかわりも
大事なことと思います。私自身、看護婦として働きながら、5人の子どもを産
み、多くの方のご援助をいただいて育ててきました。忙しいなりに家族全員がそ
れぞれの役割をはたしながら協力しあって生活できるよう努力し、いまでは孫も
2人おりますが、家族みんなが私の活動をささえてくれています。
5.メッセージなど

■鎌田さゆり(無所属・自民党宮城県連推薦)
1.選択的夫婦別姓の法制化に賛成反対、その理由
 賛成。法治国家の日本で、法律上認められず様々な制約を強いられている現状
はあらためるべきです。

2.婚外子差別撤廃に賛成反対、その理由賛成。
 みんなそれぞれの事情とそれぞれのスタイルがあるので婚外子という一つのス
タイルで差別されるのはおかしいと思います。

3.別姓夫婦の子の姓について、 婚姻時に届け出か、出生時に届け出か、その
理由
 出生時。やはり、生まれたその時に考える方が自然じゃないでしょうか。

4.家族とは、どのようにあるべきか
 様々なスタイルがあっていいと思います。

5.メッセージなど
 皆さんのおかげで、色んなことを教えていただいて、お知り合いになれた自分
が幸せ者だなーと思っています。

■市川一朗(無所属・自民党宮城県連推薦)当選
1.選択的夫婦別姓の法制化に賛成反対、その理由
 基本的には、姓はその個人の選択にまかせてよいと考えております。但し、現
在その考えの人が国民の多数かどうかについては疑問です。今少し時間が必要な
のではないかと考えております。

2.婚外子差別撤廃に賛成反対、その理由
 生まれてくる子供には差別なく対応すべきであると考えます。
但し、民法900条の相続の問題については、差別だけでなく相続のあり方として
もっと検討しないと、差別の問題とは別の問題が生じてくる危険があると考えま
す。また、公序良俗に反するような親や、家族に対するブレーキの役目もあると
考えられますので、本人に責任はないものの、撤廃が現在唯一のとるべき道なの
でしょうか。

3.別姓夫婦の子の姓について、
  婚姻時に届け出か、出生時に届け出か、その理由
 出生時の方が良いのではないかと考えます。その方が、親が子に対してより現
実的、子に有利な選択をするのではないでしょうか。

4.家族とは、どのようにあるべきか
 他人に迷惑をおよぼさないかぎり、いかようなものであろうが、傍の人間がと
やかくいう性質のものではないと考えます。
5.メッセージなど

■中沢幸男(無所属)・回答者  佐藤幹雄(政策担当)
1.選択的夫婦別姓の法制化に賛成反対、その理由
 反対。「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ姓を名乗るべき」と考えます。

2.婚外子差別撤廃に賛成反対、その理由
 条件付きで賛成。子供に責任がなく非嫡出子というだけで権利の不利益、差別
は人権侵害になる。民法改正については社会通念を考慮して改正すべきである。

3.別姓夫婦の子の姓について
 別姓夫婦の子は、婚姻時に届け出することに賛成です。民法750条に「婚姻の
際に定める」と規定されております。

4.家族とは、どのようにあるべきか
 最近は「夫婦共働き家庭」も増えて、父子家庭、母子家庭など、家族のスタイ
ルも多様化して来ました。また少子化現象になり深刻な問題を抱えております。
昔の家長制度や家制度を排除しつつも良い意味での両親を中心とした家族(ファ
ミリー)制度は残すべきかと思います。子供の権利を尊び伸び伸びと育てる家庭
環境づくりも大切かと存じます。

5.メッセージなど
 選択的夫婦別姓の法制化に向けて、ご努力される皆様に感謝いたします。主義
主張は異なっても、一つのものに固まってしまうよりは、次代に則した法改正は
すべきと存じます。皆様の多様なご意見をもとに、住み良い世の中にしたいと存
じます。ご返事遅れましてすみません。今後共よろしくお願い致します。

 なお、新聞等に公表されている全ての候補者(予定者)に質問状を送付しまし
たが、6月21日午前9時現在『別姓通信』編集部まで届いていない方の回答に
ついては、載せられませんでした。ご了承ください。また、上記の回答は、編集
部への到着順に掲載しました。(土屋)

追加
■遠藤要(自民党) 
夫婦別姓問題については、時代の変化、価値観の多様化、女性の社会進出の拡大
等により、その実施を求める要望が増えています。しかしながら、一方で、伝統
的な価値観を大切にすべきだという意見や、日本的な家庭制度の良さを損なうも
のだという意見も根強くあります。
現状では国民的なコンセンサスが得られているとは言い難いため、なお慎重に議
論を重ねるべき問題だと考えております。(98/06/22AM11:50FAX受信)

■桜井充(民主党)当選  回答者  遊佐美由紀

1.選択的夫婦別姓の法制化に賛成反対、その理由
 賛成。個人の尊厳と男女平等の観点から。
  結婚により姓を変えることは、仕事を続けてきた女性にとっては不利益になる
場合がある。また、出生から自分の人生とともに続いた姓は、人格権を構成する
ようになっている。婚姻に際して、自分のせいも継続できるように、民法を改正
し、選択的夫婦別姓制度を実現する必要がある。
  さらに、成熟化していく社会と個人は、多様な価値観を許容しあう寛容さを求
めている。
  その点からも、夫婦がそれぞれ別の氏を名乗ることを望むなら、その道が開か
れている社会にしたい。

国会において、民主党の有志議員をはじめとした超党派の議員が民法改正案を出
している。改正案の要点は、1)選択的夫婦別姓の導入。2)子の姓は出生時に定め
る。3)婚姻年齢は男女ともに満18歳以上。4)女性の再婚禁止期間は離婚後100日
5)嫡出子と非嫡出子の法的相続分は同等の5点。

2.婚外子差別撤廃に賛成反対、その理由
 賛成。子どもに最善の利益を保障し、子どもの平等を実現する観点から。
  憲法の「法の下に平等」の原則にもとづいて嫡出子と非嫡出子の法的相続分を
同一にする必要がある。

3.別姓夫婦の子の姓について
 出生時。選択の幅は広いほうが良い。
  また 、結婚と出産をワンセットで捉えることにともなう問題もある。例えば、
肉体的な理由その他で、子どもを持てないことがわかっている男女に、結婚をす
る際に、子どもの姓を届けさせることの残酷性など。

4.家族とは、どのようにあるべきか
  価値観の多様性を反映して、家族のありかたについても多様性が認められるべき。
  「法や形式で家族の絆がつくられるものではない。生活をして情がかもしだされ
てくる中から絆はうまれてくるもの」。「同じ姓だから心が向き合うという発想に
は疑問がある」。

5.メッセージなど
  桜井充は、13年間医療の現場で、内科の医師として、アトピー性皮膚炎、アレル
ギー疾患、心身症、不登校の子どもたちの診療に当たり、その経験から、基本は家
族であることを痛感しています。
  ちがいといろいろな生き方を認め合い尊重し合う家族を築くために、選択的夫婦
別姓制度が早期に実現できるよう努力します!(98/06/27AM2:00FAX受信)


メニューに戻る

インフォメーションに戻る

活動内容に戻る