民法改正案(選択的夫婦別姓導入、非嫡出子相続差別撤廃等)の提出について  

                            1999年12月10日
● 衆参両院にそれぞれ下記会派が共同で提出
  衆議院:民主党、日本共産党、社会民主党、さきがけ、その他有志
  参議院:民主党、新緑風会、日本共産党、社会民主党、護憲連合、その他有志
  (民主党、日本共産党、社会民主党は、党議拘束に基づく参加である)
● 衆法の提出
  提出日:1999年12月10日(金)14時半
  提出者:北村哲男(民)、木島日出夫(共)、保坂展人(社)、武村正義(さ)、石毛^子(民)
      枝野幸男(民)、松本惟子(民)、坂上富男(民)、藤田スミ(共)
  賛成者:4会派所属議員及び無所属有志
● 参法の発議
  発議日:1999年12月10日(金)14時
  発議者:千葉景子(民)、吉川春子(共)、福島瑞穂(社)、江田五月(民)、小宮山洋子(民)
      円より子(民)、井上美代)(共)、八田ひろ子(共)、清水澄子(社)、照屋寛徳(社)
  賛成者:3会派所属議員、参議院の会有志、二院クラブ、自由連合有志及び無所属有志
● 法案概要
  衆法、参法とも98年6月提出された衆法(8月廃案)と同一の内容である。
@ 選択的夫婦別姓制度の導入(子の姓は出生時毎に決定)
A 非嫡出子の相続差別を撤廃(現行は嫡出子の1/2→同等化)
B 女性の婚姻可能年齢を男性と同じ18歳に引上げ(現行16歳)
C 女性の再婚禁止期間を100日に短縮(現行180日)
● 提出目的
  本年6月に施行された男女共同参画社会基本法を推進力として、男女共同参画社会を実
 現するためには、様々な分野で制度上の改革が不可欠であり、中でも、家族に係る制度、慣
 行の見直しは、その重要な柱といえる。選択的夫婦別姓制度は、女性と男性が対等な関係に
 立ってお互いを尊重し、多様なライフスタイル、家族のかたち、価値観を共有できる自立と
 共生の社会を築くために必要であり、社会のあらゆる分野で活動する女性たちの要望も強い      
 ことから、その法制化をめざす。

衆議院:民法の一部を改正する法律案の概要 

1 婚姻の成立要件について
 (1)婚姻適齢を男女とも18歳とする。
 (2)再婚禁止期間を、嫡出推定の重複をさけるために必要な最低限
    の期間である100日に短縮する。
2 夫婦等の氏について
 (1)夫婦は、婚姻の際、夫婦の共通の氏を称するか、各自の婚姻前
    の氏を称するかを定める。
 (2)別氏夫婦の子は、その出生時における父母の協議で定められた
    父又は母の氏を称する。協議が調わないとき又は協議ができない
    ときは、家庭裁判所が、父又は母の氏を子が称する氏として定め
    る。
 (3)別氏夫婦を養親とする養子は、養親(養子が成年者であるときは
    養親及び養子)の協議で定められた養親のいずれかの氏を称す
    る。
 (4)別氏夫婦の子は、未成年であるときは、父母が婚姻中であって特
    別な事情がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て自己と氏
    の異なる父又は母の氏へ変更でき、成年に達した後は、特別の
    事情の有無を問わず、家庭裁判所の許可を得て父又は母の氏へ
    変更できる。
 (5)改正法施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、改正法施
    行後2年間に限り、その合意に基づく届出により婚姻前の氏に復
    することができる。
    これにより父又は母と氏を異にすることとなった子は、父母の上記
    届出後3月内の届出により婚姻前の氏に復した父又は母の氏を
    称することができる。
3 相続について
    相続人中に嫡出子と非嫡出子とがある場合のそれぞれの法廷相
    続分を同一とする。


参議院:民法の一部を改正する法律案の概要

1 婚姻の成立  (1)婚姻適齢を男女とも18歳とする。  (2)再婚禁止期間を、100日に短縮する。 2 夫婦の氏  (1)夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、     又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。  (2)改正法の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻中に限り、     配偶者との合意に基づき、改正法の施行の日から2年以内に別に法律で     定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏に復することが     できるものとする。 3 子の氏  (1)別氏夫婦の子は、その出生の際に父母の協議で定める父若しくは母の     氏を称するものとする。  (2)(1)の協議が調わないとき、又は協議ができないときは、     家庭裁判所は、父又は母の請求により、協議に代わる審判をすることが     できるものとする。  (3)別氏夫婦がともに養子をする場合において、養子となる者が15歳以     上であるときは、縁組の際に養親となる者と養子となる者の協議で定め     る養親のいずれかの氏、養子となる者が15歳未満であるときは、縁組     の際に養親となる者の協議で定める養親のいずれかの氏を称するものと     する。 4 相続の効力   嫡出でない子の相続分は嫡出である子の相続分と同一とするものとする。 5 施行期日   この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から   施行するものとする。

民法の一部を改正する法律案〜衆議院案・参議院案の相違点〜

○第790条第2項(子の氏)   家庭裁判所が子の氏を定めるべき場合には、@父母の双方が死亡するなど  してそもそも協議自体ができない場合とA協議しようと思えばできるがそれが  調わないような場合の2通りがあり、@は家事審判法の甲類、Aは乙類に該  当すると思われる。民法では、このような場合、甲類の場合と乙類の場合を  書き分けているので(第811条第4項・5項)、参議院案ではこれを書き分  けることとした。 ○第791条第1項ただし書(子の氏の変更)   衆議院案は、法制審要綱と同様、別氏夫婦の未成年の子の氏変更は特別の  事情がなければできないとしているが、法制審要綱の規定は、別氏夫婦の子  の氏を統一する視点から設けられたものと考えられる。本案では、子の称す  る氏は出生の際に自由に定め得るため、兄弟姉妹の氏が統一されるとは限ら  れず、このような制限をする理由がないため、ただし書きを削った。 ○第810条第1項・第2項(養子の氏)   衆議院案では、養子が成年者のときは縁組の際に自らの称すべき氏につい  て協議できることとしているが、現行法上、15歳に達すると、親権者によ  る代諾を要せず自らの意思のみで養子となれること、親権者の代理を要せず  に氏の変更ができることにかんがみ、15歳以上であれば、縁組の際に養子  となる者が自らの称すべき氏について協議することができることとした。 ○附則第4条第2項(子の氏に関する経過措置)   衆議院案では、父又は母が経過措置により婚姻前の氏に復した場合には子  が届出のみで当該復した氏に変更することを認める経過措置を置いている。参  議院案では、そのような場合、通常の氏の変更手続き(家裁の許可(第791条))  により変更することが可能であることから、衆議院案のような特別の規定は置  かないこととした。

〈参議院〉民法の一部を改正する法案趣旨説明

 ただいま議題となりました民法の一部を改正する法律案につきま して、発議者を代表して、その趣旨及び内容の概要を御説明申し上 げます。  戦後、個人の尊厳と両性の本質的平等を基本理念とする家族法改 正が行われましたが、改正作業が急を要したため、旧家族法の規定 をそのまま継承した部分が相当多くあり、近代化・民主化の点では、 必ずしも十分とは言い難く、将来における改正を課題としたまま施 行されました。  こうした経緯から、昭和二十九年以来、法制審議会において、家 族法の全面的な見直しのための審議が続けられており、昭和二十九 年の時点で既に、夫婦の氏については、「夫婦異姓を認むべきか否 か等の問題につき、なお検討の必要がある。」とされていました。  その後、約半世紀の間に、わが国の社会経済情勢・国民生活の著 しい変化に伴い、家族の状況は変容し、個人の人生観・価値観も多 様化し、婚姻に対する意識は大きく変わってきています。  また、女性の社会進出に伴い、婚姻によって氏を改めることが社 会的な不利益・不都合をもたらす事態が増加する一方、少子社会の 進展によって、家名を維持するために婚姻を躊躇する事態も生じ てきたため、この解決策として、夫婦の氏の在り方を見直す必要が あります。  法制審議会は、平成八年二月、個人を尊重し、男女間の対等な関 係を確立しようとする観点から、選択的夫婦別氏制の導入を軸とす る、婚姻制度等の改正要綱を決定し、法務大臣に答申しました。こ の答申に基づく政府の民法改正案は、未だ、国会に提出されており ません。  ところで、本年6月には、男女共同参画社会基本法が施行され、 男女共同参画社会の形成を目指して、社会のあらゆる分野において、 さまざまな制度の見直しが行われております。本法律案は、男女平 等等の実現に向けて、法制審議会の答申の趣旨に基づき、その内容を より進展させようとするものであります。以下、本法律案の内容の 概要につきまして、御説明申し上げます。  第一に、婚姻の成立要件につきましては、婚姻年齢を、女性につ いて二歳引き上げて、男女とも満十八歳とするとともに、女性の再 婚禁止期間を現行の六か月から百日に短縮するものとしております。  第二に、夫婦の氏につきましては、婚姻による改氏で生ずる不利 益・不都合の解消、多様な価値観の許容等の観点から選択的夫婦別 氏制を導入し、夫婦が婚姻の際に、同氏を称するか、別氏を称するか を選択することができるものとします。  なお、改正法施行前に婚姻した夫婦につきましては、改正法施行 後二年以内に、夫婦の合意に基づいて届け出ることにより、別氏夫婦と なることができるものとしております。  第三に、別氏夫婦の子はその出生の際に、父母の協議で定める 父又は母の氏を称するものとすし、その協議が調わないとき、又は協 議することができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によ り、協議に代わる審判をすることができるものとしております。  また、別氏夫婦がともに養子をする場合において、養子となる者 が十五歳以上であるときは、縁組の際に養親となる者と養子となる 者の協議で定める養親のいずれかの氏、養子となる者が十五歳未満 であるときは、縁組の際に養親となる者の協議で定める養親のいず れかの氏を称するものとしております。  第四に、相続の効力につきましては、個人の尊厳や平等を重視す る観点から、また、子どもに対する差別の禁止を定める子どもの権 利条約の趣旨にかんがみ、嫡出でない子の相続分を嫡出である子の 相続分と同一としております。  このほか、所要の規定の整備を行うものとしております。  以上が、この法律案の提案の趣旨及び内容の概要であります。何 とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願い 申し上げます。                    1999年12月
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